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PROJECT STORY:EMP普及促進に向けた取り組み

26 JUNE 2025インタビュー

EMPが日本の資産運用業界を多様化する

FinCity.Tokyoが実施するEmerging Managers Program(新興運用業者促進プログラム)の普及促進に向けた取り組みは、多様な運用会社の市場参入をサポートする革新的なものです。資産運用業界のエコシステムの活性化を担うイニシアチブの一つとして注目を集めるEMPについて、FinCity.Tokyoのプロジェクトマネージャーである村井翔太郎氏と東海林美咲氏が、詳しく解説します。

―FinCity.TokyoのEmerging Managers Program(新興運用業者促進プログラム、以下EMP)とは、どのようなプログラムなのでしょうか?
村井:

FinCity.Tokyoでは、2019年の設立当初から東京都と連携し、EMPの普及促進に向けた取り組みを行っています。これは、日本に拠点を置くEmerging Manager(新興運用業者、以下EM)の市場参入を後押しし、アセットオーナー*(以下AO)および大手金融機関**からの資金供給を通じて、投資金融分野におけるイノベーションと多様性を促すことを目的としたものです。

ここで言うEMとは、「新興」とは言いつつも、長年資産運用会社などで実績を積み、自己資金を投じて独立・起業したプロフェッショナルな運用者を指します。そのため、大手運用会社と比べて販売会社との関係などのしがらみを持たず、AOとの利害がより一致した運用が期待されます。また、組織が比較的小規模であることから人事異動が少なく、投資先企業との中長期的な関係構築にも強みがあります。

FinCity.Tokyo取り組みではこうした背景を踏まえ、2019年以降、国内外における先進的な取り組みやEMの活動実態に関する情報発信を行うことで、EMへの投資の意義や可能性に対する理解が多様な関係者に広がることを目指してきました。

FinCity.Tokyoの活動と歩調を合わせるかたちで、2023年12月には内閣官房および金融庁が「資産運用立国の実現に向けた政策プラン」を策定し、国内AO・大手金融機関によるEMへの資金供給を促すための環境整備を日本版EMPとして打ち出しました。現在では、国内AO・大手金融機関各社がこの政策方針を踏まえ、自社なりのEMPへの取り組みを本格的に進めつつあります。

東海林:

EMは、自身の思い描くような運用、企業へのアドバイスおよびエンゲージメントを行いたい、という強い意志を持って大手金融グループから独立しているケースが多いです。また、大手では構造的に投資が困難だった新規上場企業や小型株への投資を行い、小回りの効くプレイヤーとして日本にこれまでなかった視点をもたらすなど、EMは成長資金の多様化を促進する側面もあります。

―なぜ、このプログラムが日本で重要となるのでしょうか?
村井:

海外ではAOが競ってEMに投資を行ってキャパシティーを確保し、将来の成長機会を確保することが常識になっています。こうした競争が、投資金融のイノベーションにつながります。一方日本のAOは、独立開業後のトラックレコード(実績年数)の長さや資産規模などの形式的基準があるため、EMに投資しにくい傾向があります。

EMへのアロケーションを行わずに機会損失を生んだり、ポートフォリオの新陳代謝を妨げたりすることがないよう、海外AOとのつながりが豊富なFinCity.Tokyoでは日本のAOに対し、海外事例や海外AOの考え方・取り組みなどを発信しています。 

―FinCity.TokyoのEMPが提供している、具体的な支援内容を教えてください。
東海林・村井:

大きく分けて、以下のものが存在します。

  • Tokyo Asset Management Forum (TAMF)
    EMの重要性を訴求する、国内AO・大手金融機関向けのオープンなカンファレンスです。これまでの実施分では、金融庁当局がEMの方針を説明した他、海外のAOによる事例共有などもありました。ご興味があれば、どなたでも参加可能です。
  • 海外AOサーベイ及び海外AOとEM間のマッチング
    海外AOによるEMへの投資の実態を調べるために、定期調査を実施しています。さらに、調査を通じて日本のEMに興味を持ったAOには、EMとのマッチングの機会も提供しています。FinCity.Tokyoは、EM自身が自らアップデートを行う専用EMデータベースを保有しており、対象となるAOにはアクセス権を付与しています。
  • EM Showcase
    2023年度に開始した、EMエコシステムの現状をスナップショットとして公表する取り組みです。FinCity.Tokyoの設定した基準に該当するEMの中から、運用手法や投資哲学が特徴的であったり、業界内になかったビジネスモデルを提唱していたりするEMを中心に、2023年度は15社、2024年度は25社をショーケースしました。ショーケースするEMの選定委員会には、国内の大手資産運用会社とAOが参加しています。
    EM Showcaseの活用事例の第一号として、かんぽ生命および大和証券グループ本社が2025年3月、ショーケース選出EMのカディラキャピタルマネジメント株式会社に投資を行いました。
  • 独立開業道場
    これから独立を考えている「未来のEM」を対象としたセミナーです。先輩EMが開業に係る経験談を共有する他、専門家が資産運用業のライセンス取得手続き、税務・コンプライアンスに関する実務的アドバイスを伝えます。EMを志す方であれば、どなたでも参加可能です。
東海林:

EMPにご関心を持っていただいた際には、事務局がミーティングを実施し、どのようなサポートができるかをご説明した上で、最適なプログラムにおつなぎします。まずは事務局までご連絡ください。

―利用を検討している企業の皆様に、メッセージをお願いします。
村井:

日本のEMPに関する取り組みは、ようやく一歩目を踏み出した段階にあると感じています。EMは自己資金を投じて、あえて日本という市場で独立の道を選んだ、非常に志の高いプレーヤーたちです。
EMPの本質は、EM側よりも資金の出し手であるAO側が一歩踏み出し、既存の資金配分の在り方を見直していくという「投資行動の変革」にあります。
長期的な視点で、将来の成長機会の担い手となる日本のEMにも目を向けていただければ嬉しく思います。

東海林:

日本独特の業界環境・規制を少しずつグローバルスタンダードに近づけるような動きがあり、日本版EMPもこの流れに位置づけられるものです。国内のAOおよび大手金融機関の皆様にも、ぜひFinCity.TokyoのEMPに注目していただきたいです。AOとのマッチングを希望されるEMの皆様からのお問い合わせもお待ちしております。

 

*アセットオーナー(AO):年金基金、共済組合、保険会社、大学エンダウメント など
**金融機関:銀行グループ、証券グループ、資産運用会社 など

 

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