レジリエンスボンドで世界とつながる ――FinCity.Tokyo主催のイベントに東京都が登壇 東京の取組をロンドンで発信した手応え
東京都財務局主計部公債課・清水禎章氏、東京都産業労働局総務部国際金融都市推進課 笹川武寛氏
London Climate Action Week(LCAW)中にFinCity.Tokyoがロンドンで主催した「UK-Japan Transition Finance Forum 2026」等のイベントは、昨年の成功を受けた継続的な取り組みとして、グリーントランジションに向けた資金調達における日英間の連携強化について議論する場となりました。本フォーラムの焦点となった「TOKYOレジリエンスボンド」を含む東京都が推進するサステナブルファイナンスの取り組み、そして日英連携の重要性やその意義について、東京都の清水禎章氏(財務局主計部公債課)と笹川武寛氏(産業労働局総務部国際金融都市推進課)に聞きました。
ネットゼロに向けた資金確保において、東京の強みはどこにありますか
笹川氏: 東京の最大の強みは、大きな人口を背景にした120兆円にのぼる巨大なGDP(国内総生産)と2,200兆円もの個人金融資産を有していることです。このGDPの額は一国の国家予算に匹敵する経済規模で、個人金融資産を含め、サステナブルファイナンスを推進する上での大きな原動力となります。
清水氏: 強靱で持続可能な財政基盤も、東京都の大きな強みです。東京都は自主財源の比率が高く、義務的経費の割合が低いため、非常に良好な財政状況を維持しています。その結果、信用力評価(スタンドアローン評価)では国の「A+」を上回る「aa+」の格付けを得ています。また、15年以上にわたり国際市場でベンチマーク債を発行してきた実績や、グリーンボンドから始まり昨年度のレジリエンスボンドに至るまで、債券分野で常に先進的な取り組みを続けてきた点も市場から高く評価されています。
なぜ、サステナブルファイナンスの分野で日英協力が重要なのでしょうか
笹川氏: ロンドンは世界的な金融センターであり、サステナブルファイナンスの議論をリードしてきた実績があります。東京都はシティ・オブ・ロンドンと交流・協力に関わる合意書(MOU)を締結し知見を共有してきました。日本がアジアを注視する一方で、ロンドンはアフリカを含む全世界をリードしています。この両者がパートナーシップを結ぶことは、地球規模の脱炭素やサステナブルファイナンスの課題にアプローチする上で極めて重要だと考えています。
清水氏: 債券市場の観点から申し上げると、ロンドンにはサステナブル分野、特にレジリエンスに関心の高い投資家が数多く存在します。東京都の外債はロンドン証券取引所にも上場しており、世界中の投資家とつながり、情報を発信していく上で、ロンドンとの関係は欠かせません。
今回の「UK-Japan Transition Finance Forum 2026」等に登壇されたきっかけを教えてください
清水氏: もともとClimate Bonds Initiative (CBI) の授賞式への参加でロンドン訪問を予定していたところ、FinCity.Tokyo(FCT)から登壇の依頼をいただきました。東京都の債券、特にレジリエンスボンドを世界にPRする貴重な機会だと考え、参加させていただきました。
笹川氏: 私は都庁でサステナブルファイナンス推進を担当していますが、東京の取り組みをロンドンで発信してほしいという声をFCTからいただきました。また、現地の議論を直接聞き、東京の今後の政策に生かすための情報収集としても、非常に良い機会になると考え、登壇しました。
フォーラムでは、具体的にどのような内容を話されたのでしょうか
笹川氏: 東京の膨大な金融資産を、アジアのトランジションファイナンスへ生かしていくことの重要性をメインメッセージとして伝えました。あわせて、東京が魅力的な投資先であることを強調しました。言語面での課題が指摘されていますが、懸念を払拭するためにも「東京開業ワンストップセンター」や「ビジネスコンシェルジュ東京」による英語でのビジネス支援、生活環境の整備、補助金制度など、海外企業の関係者だけでなく家族も含めてスムーズに進出・定着できる環境を整えていることをアピールしました。
清水氏: 私からは、東京都債の概要について説明しました。特に、投資家の関心が非常に高いTOKYOレジリエンスボンドの考え方や資金使途について重点的に発信しました。
今回の経験から得られた気づきや、印象に残っていることを教えてください
笹川氏: 欧州におけるレジリエンスはあくまで気候変動の文脈における概念だと自分では捉えていました。しかし実際にこちらに来てみると、皆さんが当然のようにディフェンス(国防・安全保障)の観点も含めて議論している。自分が知らなかった世界がまだまだ存在するのだという点は、大きな気づきでした。
清水氏: 日本のGX債や東京都のレジリエンスボンドといった先進的な取り組みが、世界から大きな注目を集めていることを改めて実感しました。従来の「グリーン」という枠組みにとどまらず、現に発生している災害や気候変動リスクに対応しながら、脱炭素への移行を着実に進めていくためには、レジリエンス分野への資金供給がますます重要になっています。今回のフォーラムを通じて、こうした分野への関心が世界的に高まっていることを強く認識しました。
英国側からの反応はどういったものでしたか
笹川氏: 「非常に面白いプレゼンだった」というポジティブな声を多くいただきました。「トランジションを真に進めるにはどうすべきか」といった本質的な質問も多く、私たちが抱いている課題を世界の専門家も共有していると感じました。プレゼンの枠を超えた深いディスカッションができ、非常に手応えを感じています。
清水氏: 投資家をはじめ、多くの関係者の皆さまから「レジリエンスボンドについてより詳しく知りたい」といった声をいただくとともに、IRのさらなる充実に向けた具体的なご助言もいただきました。また、メディアからも注目が寄せられ、取材を受ける機会もありました。総じて、東京都のレジリエンスボンドに対する非常に大きな期待と関心を感じました。
今後、ネットゼロ・ファイナンスを推進するために、東京は世界の金融ハブとどのように連携していくべきでしょうか
笹川氏: 大きく二つあります。一つは、「アクションを取り続け、発信し続けること」です。日本の行政はミスがないよう慎重に対応し、すべて調整が済んでから発信する傾向が強いですが、金融の世界は逆です。まず発信して、知ってもらい、必要であればそこから微修正をかけていきます。まずアクションを取り、それを発信することが大切です。もう一つは「東京らしさ」を失わないこと。安全性はもちろんですが、誠実さ(Polite & Diligent)や信頼(Trust)といった日本独自の強みを持ちつつ、他都市と協力していくことが重要だと考えています。
清水氏: まず重要なのは、東京都の取り組みを世界に向けて効果的に発信していくことだと考えています。そのための手段として、FCTやCBIが開催するこのようなイベントは、東京都の取り組みを国際的な投資家や関係者に直接伝え、意見交換を通じて理解を深めていただくための極めて貴重な機会です。債券の発行体としての立場から申し上げると、我々の最大の目的は資金調達ですが、それだけではなく、レジリエンスボンドの発行により東京都の強靭化への取り組みを世界に発信し、レジリエンス分野への投資を世界的に促進していくという狙いもあります。より多くの人に取り組みを知ってもらい、「自分たちも参画したい」という気づきを与え、コラボレーションへとつなげる。それが東京都の取り組みへの理解とレジリエンス投資の拡大につながり、ひいては投資家が集まることで東京都の資金調達もより容易になる――そうした好循環を生み出していきたいです。