インタビュー:イェスパー・コール氏に聞く、国際金融センターとしての東京の「次なる章」
FinCity.Tokyoアンバサダーであり、日本経済に関するメディアのコメンテーターとしても著名なイェスパー・コール氏に、国際金融センターとして進化を続ける東京の姿や、変化する日本の投資環境について伺いました。また、不確実性が高まる世界において、なぜ東京が「信頼性の高い金融ハブ」になり得ると同氏が考えているのか、その見解を語っていただきました。

長年FinCity.Tokyoのアンバサダーを務めていらっしゃいますが、その関係はどのように始まったのですか?また、アンバサダーとしての役割はどのようなものですか?
小池知事の就任後、知事の方から私に連絡がありました。JPモルガンや自民党での私のこれまでの経験を活かし、東京を金融ハブとして確立するために協力して欲しいと言われました。
同様の取り組みは数年おきにあったものの、大きな勢いはありませんでした。しかし、小池知事は、東京都だけでなく、規制当局、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)、その他の国や地方の利害関係者など、関係するすべての主体を結集させるという、これまでとは異なるアプローチを提案して来たのです。FinCity.Tokyoは、民間部門の需要と規制当局や公的機関を結びつける一種の管制塔としての役割を果たすことになります。私は、日本での40年間で初めて、東京を世界有数の金融センターとして確立するための協調的な取り組みを行う真の機会だと考えました。
アンバサダーとして、私はFinCity.Tokyoがニューヨークをはじめとする各地で展開する様々なアウトリーチプログラムに参加し、また、FinCity Global Forumという旗艦イベントでも講演を行ってきました。年金基金、投資信託、ファミリーオフィスなどとの協業を通じて、投資家や金融専門家と東京を結びつける機会にも恵まれています。東京が企業にとってますます魅力的な場所となるにつれ、国際企業とFinCity.Tokyoのサポート機能やコンシェルジュ機能との連携に対するニーズが高まっています。
同様に重要なのは、他の金融センターからの訪問者と交流することです。金融は本質的にグローバルな分野なので、互いに学び合う機会があります。
ここ数年における東京の金融センターとしての発展について、どう評価されますか?
進歩が見られ、変革への強い意志が感じられます。重要な動きの一つは、岸田首相の下で日本が資産運用立国の実現に向けた取組を開始したことです。その広範な構想は、個人投資家向けの金融サービスを改善し、家計が資産をより有効活用することを促すことにありました。
過去15年から20年の間、日本の金融改革への取り組みは、外部からの圧力に左右される守備的なものでした。しかし、ここ4、5年で、日本ははるかに積極的な姿勢へと変化しました。日本は、国際的な圧力に反応する立場から、グローバルスタンダードの形成に貢献する立場へと、ますます移行しつつあります。これは、非常に重要な意識改革と言えるでしょう。
日本の金融市場における最近の動向で、世界の投資家が注目すべきものはありますか?
東京都と東京証券取引所のガバナンス改革における最も重要な動きは、財務がもはや後回しにされるものではなく、企業経営の中心的な考慮事項になりつつあるということです。日本におけるビジネスチャンスは計り知れません。
もう一つの大きな変化は、家計資産の動向です。金利上昇とインフレが購買力を圧迫する一方で、ベビーブーム世代からの資産相続が大規模な富の移転を引き起こしています。今後10年間で、日本の国民総生産(GDP)の約1.2倍に相当する資産が次世代に引き継がれると予想されています。
この国の金融構造の変化は、金融機関に新たな機会をもたらしています。政策立案者たちもまた、貯蓄から投資への資金移動が効率的かつ効果的に行われるよう、強く注力しています。
最後に、2040年までに17の重点分野へ投資を行うという、政府による時宜を得た野心的な計画が挙げられます。投資家にとって重要なのは、日本政府が、将来のビジネスチャンスを「地図」の様に示している点です。長期プロジェクトに対する政府の支援は、これらの分野への投資を促進するのに役立ち、政策的な支援は2040年までの新技術開発の基盤となるでしょう。このモデルは官民連携に大きく依存するとも予想されており、政府資金は総投資額のごく一部を占めるに過ぎません。
日本のコーポレートガバナンス改革の進捗については、どう思いますか?
歴史的に見て、日本では株主などの資産所有者が企業の意思決定に及ぼす影響力は比較的限られていました。
最近のガバナンス改革は、経産省、FinCity.Tokyo、金融庁が連携して、取締役会の責任に対する考え方を変革しようとする取り組みを表しています。取締役会には、現状維持に固執するのではなく、すべてのステークホルダーの利益を考慮することがますます求められるようになっています。
また、第三者の関与も含め、買収提案を客観的に評価できる立場にもなっています。これはプレッシャーであると同時にチャンスでもあります。海外投資家にとって、日本は企業支配権と資本配分がこれまで以上に重要視される市場になりつつあります。ベンチャーキャピタル(VC)やアクティビストファンドなどの投資家にとって、日本の銀行からのレバレッジへのアクセスも増加しています。外国企業にとって資金調達へのアクセスが拡大すれば、流動性が高まり、金融サービスセクター全体に新たな機会が生まれる可能性があります。
今後数年間で、東京は金融センターとしてどのように進化していくべきだとお考えですか?
日本には透明性の高い規則と規制があり、さらに重要なことに、それらの規則・規制が透明性をもって執行されています。ますます二極化し、不安定化する世界において、東京は公正な市場、そしてセーフヘイブンとなる可能性を秘めていると私は信じています。
私は、東京が世界で最も信頼性の高い金融センターになることを望んでいます。例えば、グリーンボンドやグリーンファイナンスには、グリーンウォッシングのリスクが伴います。東京は、そのリスクが比較的低い環境を提供しています。重要なのは、手っ取り早く儲けることではなく、強靭で持続可能、かつ高い信頼性を備え、潤沢な流動性を持つ金融環境を構築することです。この点において、東京の大きな強みは、日本が法治主義、明確な規制、確立されたプロセスに深くコミットしていることです。ルールは気まぐれで変わることはありません。
勿論、日本では規制や手続き、官僚主義のために、投資開始までの期間が長くなる可能性もあります。しかしその見返りとして、投資家は安定性とビジネス機会を得ることができます。また、日本の金融市場は比較的政治的影響力が弱く、金融庁という統一された金融規制機関の存在により、金融市場規制への政治的介入も限定的です。ますます不確実性が高まる世界情勢において、こうした点が東京を金融の安全資産として大きな魅力にしています。
FinCity.Tokyoは、企業や投資家にとって東京への窓口として非常に重要な役割を担っていると考えており、その活動を今後も支援できることを楽しみにしています。
