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「女性活躍」が企業の生存戦略に|女性の活躍を推進するために企業が取り組むべきこと

「女性活躍」が企業の生存戦略に|女性の活躍を推進するために企業が取り組むべきこと

FinCity.Tokyoは、2025年10月に「中堅・中小企業向けサステナビリティ経営実践セミナー」を開催しました。セミナーでは、「2025年、変化をチャンスに変える。中堅・中小企業が拓くサステナビリティ経営の新時代」をテーマに、中堅・中小企業の経営者の皆さまやサステナビリティ経営を支援する関係者の皆さまをお招きし、大企業との協働事例から学ぶ実践的なアプローチ、金融機関による支援制度の活用法、組織力を強化するための女性活躍推進戦略まで、多角的な視点からご議論いただきました。

近年、日本の組織においてもトップが女性であるケースが増えてきました。2025年10月に高市早苗氏が総理大臣に就任したのは、象徴的な出来事と言えるでしょう。「女性活躍」は着実に進んでいるように見えます。

一方で、グローバル観点で見ると日本企業における2024年の女性管理職比率は16%に留まっており、OECDの平均である34%を大きく下回っています。

とくに、中堅・中小企業においては、男性中心の経営がなされているケースが多く、女性活躍が浸透しているとは言い難いと思われます。

今回は、社内に留まらず資産運用業界全体の女性活躍推進に参画され、今回のセミナーにもご登壇いただいた、アモーヴァ・アセットマネジメント株式会社の野田 清史(のだ きよし)氏をお招きし、組織内における女性の活躍を一層推進するために必要な取り組みについて話をうかがいました。

野田 清史(のだ きよし)氏

アモーヴァ・アセットマネジメント株式会社サステナブルインベストメント部 共同部長

1993年4月、株式会社三和銀行(現:株式会社三菱UFJ銀行)に入行し、株式運用業務を担当した後、三和アセットマネジメント株式会社(現:三菱UFJアセットマネジメント株式会社)へ出向。ファンドマネジャーとして約20年間従事した後、責任投資推進室長として同社のスチュワードシップ活動やESGインテグレーションの陣頭指揮を執るなど、責任投資活動全般の豊富な経験を積む。2022年8月に日興アセットマネジメント株式会社(現 アモーヴァ・アセットマネジメント社)に入社し、2023年10月より現職。

人手不足時代の突破口に|中堅・中小企業こそ女性活躍が必須な理由

アモーヴァ・アセットマネジメント社にとどまらず資産運用業界全体で女性活躍の推進を掲げるネットワーク「AMWF(Asset Management Women’s Forum)」に参画されている野田氏から見た、企業が女性活躍に取り組むメリットについて教えてください

野田氏:まず私の考えのベースとして、世の中の男女比はほぼ1:1でありながら、企業の中を見ると男性の比率が圧倒的に多いケースが珍しくないという状態は、非常に不自然ではないか、という問題意識があります。
そのうえで、マクロな視点からみると、日本経済は「ものづくり中心」から「ソフト化」へと移行しており、知的財産などの重要性が増しています。そうした流れの中、企業においては、従来の経営・業務の手法をそのまま継続するのではなく、イノベーションが生まれるような形に変えていく必要があります。とくにITや製薬など、イノベーションが重要な意味を持つ企業にとっては、企業が生き残るための「生存戦略」としてダイバーシティは必須であると考えています。
また、いわゆる「VUCA」と呼ばれる変化の激しい時代において、企業は柔軟な意思決定を行う必要があります。画一的な意見しか出ない組織では変化に対応できず、むしろ多様な意見を自由に言える組織のほうが、柔軟性が増して組織力が高まるのではないかと考えています。
こうした観点から、企業が女性活躍の推進に取り組む大きなメリットがあると考えます。

女性活躍の推進は、企業の「生存戦略」として、組織力を高めるために必須の取り組みであるということですね。一方で、中堅・中小企業では人員が少ないために、大手企業のように女性活躍を推進する専門部署を設けられないといった事情もあるかと思います。そういった企業は、女性活躍に対する優先度がどうしても下がってしまうかと思いますが、中堅・中小企業が女性活躍の推進に取り組む意義について、どのようにお考えでしょうか?

野田氏:女性活躍を推進することの意義の一つに、人手不足を解消するという観点があると思います。男性だけを採用のターゲットにしていては、労働人口の半分にしかアクセスすることができません。しかし、男女双方を対象にすれば100%にアクセスできる、つまり人材確保の幅を広げることができるのです。また、女性が働きやすい組織は、男性から見ても働きやすい組織であると思いますので、そうした取り組みが結果的に優秀な人材の確保にもつながると考えています。そして、人手不足は中堅・中小企業にとってより深刻な問題ですから、中堅・中小企業においても女性活躍の推進に取り組む意義は大きいと思います。
また、先ほどお話したとおり、激しい環境変化の中において企業が生き残るためには、多様な意見を反映し、柔軟な意思決定ができる組織をつくることが必須です。これは大企業に限った話ではなく、中堅・中小企業にとっても同じことが言えるでしょう。

野田氏へのインタビュー風景

 

一方で、現場の声を聞いてみると、当事者である女性自身が「それほど積極的に活躍したいわけではない」「長時間労働をしている男性管理職を見ていると自分にはムリ」と思っているケースも多いという声もあります。これを踏まえ、女性活躍を推進するためにはどのような取り組みが必要になるか、ご見解を教えてください。

野田氏:ダイバーシティの取り組みをしていると本当によく聞く話で、実際に当社やAMWF内でもその話はよく議題に上がります。典型的なのは、現在の上司である男性管理職の働き方を見て、「とても自分には務まらない」「自信がない」と感じてしまうケースです。
まずは、男性管理職の働き方を変えていくことが必要だと考えています。そのうえで、管理職へ登用の可能性がある女性に対し、管理職として自信をもって取り組めるようにコミュニケーションをとることや働きかけを行うことも同時に必要になってくるでしょう。

ロールモデル不足はどう乗り越える?現実的な解決策とは

女性がキャリアアップを図るうえで、身近なロールモデルや相談できる女性管理職が少ないという課題もあると考えられます。悩みを抱える女性の方は多いと思われますが、どのように道筋を提示するのがよいでしょうか?

野田氏:ロールモデルについては、現在の上司、多くの場合は男性上司かもしれませんが、その方だけを参考にするのではなく、他部署の女性上司や他社とのネットワークを通じて知り合った方など、さまざまな方に目を向けると良いと思います。
また、ロールモデルと言っても、その人の行動をそっくり真似る必要はありません。いろいろな方の話を聞いて自分にもできそうな要素をピックアップし、アレンジしながら「自分なりの管理職像」を作っていけば良いと考えています。
女性管理職の数が増えてくればおそらくそういった懸念もなくなるでしょうが、現在は移行期ですから「生みの苦しみ」のような側面もあると感じています。

野田氏へのインタビュー風景

 

近年では、メディアなどで「女性リーダー」がピックアップされることも多いため、他の組織に目を向けることで参考にできる要素は非常に多そうですね

野田氏:おっしゃるとおりです。その他に、当社でも取り入れているような「メンター制度」も非常に有効な施策です。上司に限らず社内でアドバイスができる人をメンターとして付け、常に相談に乗ってもらう仕組みです。

これはすでに管理職になられた方に対しても有効です。実際に管理職に昇進した直後は男女関係なくさまざまな悩みを抱えることが多いため、仕事の悩みや将来のキャリアの話など、適切に話を聞いてくれるメンターを置く制度を社内で作っていくことが重要だと思います。

「経営層からの働きかけ」と「環境・制度面からの支援」女性活躍を進める2つのアプローチ

これまでお話しいただいたとおり、中堅・中小企業においても女性活躍の推進は重要な取り組みである一方で、様々な経営課題、解決すべき問題を抱えていらっしゃる経営者・管理職の方々に対しその重要性を理解していただくことが難しい場合も多いのではないかと推察されます。女性活躍推進の重要性をどのように説いていくことが必要でしょうか?

野田氏:まず、経営者が「女性活躍を進めると良い効果がある」ということを、本心で信じられるかどうかが非常に大きいです。他社がやっているから、といった、やらされ感で取り組んだとしても続きません。経営者自身が問題意識を持ち、「これは解決しなければならない」と本気で思っているかが重要です。
特に中堅・中小企業の場合、経営者の影響力が非常に大きいです。経営者が「腹落ち」して、その重要性・必要性を理解しているか、「女性活躍を推進しないと組織の生存戦略に関わる」という危機意識まで持っているかが重要です。経営者がそう考えていれば、従業員にも伝わっていくと思います。

野田氏へのインタビュー風景

 

「経営者が本心で取り組みを進めたいと考えている」という前提を踏まえ、そこからどのように取り組んでいくべきか教えてください

野田氏:まずは、従業員・社員の方に「この取り組みが必要だ」ということをしっかり説明し、理解してもらうことが大切です。一度説明会を開いただけでは理解できない部分もあると思うので、繰り返し話をしていくことになるでしょう。これはいわゆるトップダウン式の取り組みです。

経営者・管理職から従業員・社員に働きかける他に、従業員・社員が働く環境や制度を整えるというアプローチ方法はどうでしょうか?

野田氏:環境整備やライフイベントへの対応といった制度を整える必要があります。また、直接的ではありませんが、人事評価、実績評価において「残業や長時間労働をした人」ではなく「結果を出した人やそこに至るまでのプロセスで工夫をした人」などをしっかり評価できる人事制度も必要になってきます。

経営層からの働きかけ、環境・制度面からの支援の両面からのアプローチ方法についてお話しいただきましたが、「従業員・職員が声を上げても経営層が動かない」といったケースや、逆に「経営層が呼びかけても社員が動かない」というケースもあると思います。そういった場合にはどうしたらいいでしょうか?

野田氏:従業員から声を上げても経営者に動いてもらうのが難しい場合は、たとえば、我々のような投資家が、取り組みが進んでいない企業に対して対話の中で働きかける方法があります。また、上場企業で社外取締役がいるのであればその方に伝え、経営層に働きかけてもらうのも一つの方法です。
一方で、従業員・社員の理解が進んでいないケースについては、経営層や管理職が粘り強く社内に浸透させる活動を行うしかありません。これには非常に手間と時間がかかりますが、粘り強く取り組む必要があります。また、管理職の人事評価項目に「担当部署のダイバーシティの進捗」を入れるのも、一つの方法として挙げられます。

社内外のネットワーキングの仕組みが女性活躍を加速させる

経営者、従業員・社員の双方が女性活躍の推進に向けて取り組む必要があることが分かりました。しかし、経営者も、従業員・社員も、一人で活動することには限界があると思います。社内外の「仲間」と一緒に取り組むことが必要ではないでしょうか?

野田氏:そうですね。社内外において、ネットワーキングの仕組みを提供するのが効果的かと思います。
まず、社内の話をすると、当社でも「JAPAN WOMEN‘S GROUP」というエンプロイー・リソース・グループを作っており、各部署から希望する従業員が参加しています。私も参加者の一人で、人事部と話し合いながら当社のダイバーシティの進め方を議論しています。「社内でこういうイベントをやってみよう」といったアイデアが出て、それを実行することもあります。経営者がこうした社内のネットワーキングを後押しし、従業員・社員の自発的な行動を促すことが重要だと思います。
次に、社外のネットワーキングですが、たとえば、経営者の方が組織外の人と積極的に交流し、各社の取り組みについて情報を共有、交換するといったことが考えられます。経営者間のネットワーキングの一例として、「30%Club Japan」というイニシアチブでは、多くの企業経営者が加盟して定例で情報交換をしています。
また、我々も「インベスターグループ」というワーキンググループに参加していて、投資家同士で意見交換をしています。
このように、社内外のさまざまなステークホルダーとのネットワーキングを通じ、「仲間」の意見を聞きながら女性活躍の推進に向けた意識を高めていくことが重要だと思います。

資産運用業界における女性活躍を推進しているAMWFも、社外とのネットワーキングの一例かと思いますが、改めて具体的な活動内容について教えてください。

野田氏へのインタビュー風景

野田氏:AMWFは、一言で言えば「資産運用業界の女性活躍推進に向けて、業界横断的な取り組みを行うネットワーク」です。資産運用業界において、人材は最大の財産であり、差別化の要素でもあり、イノベーションの源泉でもあります。そうした観点から女性社員の活躍をさらに後押ししていくために、個社の取り組みにとどまらず、業界単位で取り組みを進めていく必要があるということで、ネットワークを作りました。
具体的な活動としては、イベントの開催や、ワーキンググループを通じた意見交換、年に一度の全体懇親会などを行っています。こうした活動を通じ、女性活躍の推進に向けて他社がどのような取り組みを行っているかを知ることができますし、それを自社に取り入れることができないかといった検討につながっています。

イベントの開催というお話がありましたが、具体的にはどのようなイベントを開催されているのでしょうか?

野田氏:2026年2月に「大学生向けイベント」を開催します。大学生を招いて資産運用業界の仕事の説明をしつつ、「女性にとっての働きやすさ」をアピールしています。私も過去に参加させていただき、ワークショップ後の懇親会の場で、現役の大学生がダイバーシティについてどう考えているのかを直接聞くことができ、非常に有意義な機会となりました。参加した学生の評判も良く、運用業界における将来の人材確保という観点からも意義のあるイベントでした。

女性活躍を推進する上で「資産運用業界特有の課題」はあるのでしょうか?

野田氏:他の業界と少し違う点があるとすれば、「運用部門の女性の数が非常に少ない」ということです。これはAMWFに参画する各社に共通する課題です。運用には長い経験が必要になるため、今いるベテランの人材をすぐに新しい人に置き換えることはできません。長い経験を積んだ人ほど運用能力が高いという側面があるため、新卒で女性を採用してはいますが、他部署からすぐに運用部門に配置することは難しいです。そこが悩みの一つです。
もう一つは、「業界自体の知名度が低い」ということです。金融業界というと銀行・保険・証券などを思い浮かべる方が多いようで、資産運用業界への就職を希望する人材の母集団自体が少ないという悩みがあります。AMWFの取り組みによって業界としての知名度を上げ、母集団自体を膨らませていく必要があると考えています。

「女性活躍」という言葉をなくすために ―社会全体で取り組むべきこと

民間企業・業界だけでなく、国や東京都といった行政も、女性活躍の推進に取り組んでいます。民間企業・業界から行政に期待する役割や施策などがあれば教えてください

野田氏:一つは「啓発活動」です。女性活躍の推進に向けては、粘り強く、継続的な取り組みが必要になります。そのためには、教育現場や政治の分野など、民間企業・業界以外の分野も含め、社会全体でダイバーシティの実現に向けた機運を高めていく必要があります。行政部門のみなさんには、そのための啓発活動をぜひ行っていただきたいです。
もう一つは「ネットワーキング」です。個社だけで活動していても行き詰まる部分があります。AMWFも業界横断的に取組を進めていますが、行政部門のみなさんには、より広く企業同士をつなぐ、業界同士をつなぐネットワーキングの機会や場を設定していただきたいです。金融業界だけでなく、他の業界、企業にとっても、女性活躍の推進に向けて貴重な意見交換、情報共有の場になると思います。

啓発活動という点では、金融プロモーション組織であるFinCity.Tokyoもお手伝いができそうです。
一方で、先ほど「社会全体でダイバーシティの実現に向けた機運を高めていく必要がある」というお話がありましたが、本来の「ダイバーシティ」という観点からは、性別、国籍や、障がいの有無に関わらず、誰もが活躍できる社会を実現していく必要があります。女性の活躍だけにフォーカスする必要はないはずですから、「女性活躍」という言葉自体が早くなくなることが理想ですね。

野田氏:本当におっしゃるとおりです。正直なところ、啓発活動は早く終わらせて、具体的に「何をやるかと」いうステージに移っていきたいところです。ただ、過渡期である現状ではまだまだ啓発活動が必要なのがもどかしいところです。

最後に、中堅・中小企業で女性活躍推進に携わっている担当者の皆さまへメッセージをお願いします

野田氏:まず、経営者に「取り組みの意義」をしっかりと理解していただくことが重要です。そして、自社だけで考えるのではなく、ネットワークをうまく活用して他社の意見や取り組みを聞き、その中から自社の組織風土や文化に合った取り組みをチョイスしていただきたいです。すぐに成果が出るものではないので、スモールスタートでも構いません。時間をかけつつ、他社から学びながら自社にとって最適な仕組みを整備してみてください。
取り組みの中で壁にぶつかることも多いでしょう。そうしたときにネットワークの中で悩みを共有すれば、解決策のアドバイスをもらえる可能性もあります。そういったものを活用することをおすすめします。

野田氏へのインタビュー風景

 

企業の規模に関わらず、女性活躍の推進に向けた取り組みが必要不可欠であること、また、個社の取組にとどまらず、他社とのネットワーキングを通じた取り組みや業界全体で協力した取り組みが効果的であるということが分かりました。本日はどうもありがとうございました。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。野田氏には2025年10月24日(金)にFincity Tokyoが開催した「中堅・中小企業向けサステナビリティ経営実践セミナー」にご登壇いただいています。当日のアーカイブ動画を公開しておりますので、ぜひご覧ください。
「中堅・中小企業向けサステナビリティ経営実践セミナー」アーカイブ動画

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