インタビュー:FinCity.Tokyo 「Disclosure G」プログラム責任者 竹村龍一
29 SEPTEMBER 2025インタビュー
インタビュー:日本の上場企業の英語IRスキルを強化する
FinCity.Tokyo 「Disclosure G」プログラム責任者 竹村龍一
世界の投資家から注目を集める日本の株式市場。グローバルスタンダードに準拠した、質の高い英語での情報開示やIRコミュニケーションの不足が課題です。企業の英語による情報発信強化を目指すFinCity.Tokyoの「Disclosure G」プログラムを主導する竹村龍一に、その重要性を聞きました。
「Disclosure G」プログラムについて教えてください。
この「英文情報開示支援事業(Disclosure G)」は、東京都と私どもFinCity.Tokyoが2021年から取り組む重要な事業です。主な目的は、日本の上場企業、特に中堅・中小企業が英語での情報開示やIR活動の質を高められるよう支援することです。
毎年、選抜したおよそ15社に対し、IRの専門家による実践的で包括的なサポートを提供しています。これまでに延べ約60社ほどの企業が、世界中の投資コミュニティと円滑に意思疎通し、効果的な資料を作成するスキルを身に着ける支援を受けてきました。
日本が海外投資家から大きな注目を集める今、このプログラムの重要性は増しているのではないですか。
その通りです。東京証券取引所の改革や、日本を「資産運用立国」へと変革させる政府の取り組みにより、海外投資家の日本市場への関心はかつてないほど高まっています。このプログラムが今、極めて重要であるのは、投資家の関心を実際の投資へと結びつけるための障壁、すなわち「情報格差」に正面から取り組んでいる点です。
海外投資家は「隠れた優良企業(hidden gems)」を発掘したいと考えていますが、日本の多くの有望な中堅・中小企業にはこれまで、世界に向けて英語でIR発信をするための資源やノウハウがありませんでした。「Disclosure G」は、そのギャップを埋める重要な「架け橋」として機能します
。当社は、企業が自社の成長ストーリーを明確に伝えるために必要な具体的な手法や専門知識を提供することで、企業の透明性を高め、日本で新たな投資機会を探す海外投資家にとって、より近い存在となることを目指しています。
研修に参加する企業は、どのように選ばれるのでしょうか。
私どもは、高い成長可能性を持ち、経営陣が海外投資家との対話に真摯に取り組む強い意志を持つ企業を選定しています。選考プロセスは以下の通りです。
公募: 主にグローバルな成長を目指す中堅・中小企業を対象に、公募を実施します。
書類選考と面談: まず、事業内容や財務状況に基づき、書類選考を行います。その後、選抜された企業と面談を実施し、英語での情報開示を企業戦略の中核として強化しようとするトップマネジメントの熱意とコミットメントを評価します。
こうした「潜在能力」と「意欲」の総合的な評価に基づいて最終的な参加企業が決定されます。
これまでの研修の成果はいかがですか。
非常に心強い成果が出ています。多くの参加企業は当初、海外投資家が最重要視する情報が分からなかったり、説得力のあるストーリーをどう構築しプレゼンテーションやレポートに落とし込めばよいか分からなかったりといった課題を抱えていました。
しかし、プログラムを通じて「実践的なスキル」と「自信」の両面で大きな向上が見られています。
過去の参加者からは、以下のような非常に前向きな感想が寄せられています。
「海外投資家が何を期待しているかについて、より深く理解できた」
「統合報告書や決算説明資料など、質の高い英語資料をゼロから作成できるようになった」
「外国人投資家との個別面談に、自信をもって臨めるようになった」
「開示の改善に対し、市場から好意的な反応が得られた」
今後のプログラムの展望についてお聞かせください。
この成功をさらに発展させていきたいと考えています。今後は、以下の点を計画しています。
参加企業間のネットワーク強化: プログラム修了後も、参加企業が互いにベストプラクティスを共有し、グローバルIRの取り組みを継続して支援できるコミュニティを育成していきます。
プログラム内容の拡充: ESG開示のベストプラクティスなど、投資家にとって重要性が高まっている新しいテーマをカリキュラムに組み込み、内容を常にアップデートしていきます。
支援対象の拡大: 今後、支援できる企業数を徐々に増やし、潜在能力の高いより多くの日本企業をサポートしていきたいと考えています。
プログラムの詳細について知りたい企業は、どこで情報を得られますか。
プログラム詳細や応募方法については、私どもの公式ウェブサイトにすべて記載されていますので、ぜひご確認ください。
Disclosure G 公式ウェブサイト: https://disclosure-g.tokyo/
FinCity.Tokyo のウェブサイト: https://fincity.tokyo/activities/2654/