インタビュー:株式会社QUICK 経営企画統括・グループ連携担当取締役 小森敬介氏
27 NOVEMBER 2025インタビュー
インタビュー:「高品質のデータで日本市場の魅力を伝える」
株式会社QUICKの経営企画統括・グループ連携担当取締役の小森敬介氏に、日本を見る海外投資家にデータに基づいた洞察を伝えることの重要性について聞きました。

QUICK社の事業について教えてください。
A 弊社は日経平均株価の算出など、金融・経済データを中心とした情報サービス企業です。もともとは、東京証券取引所情報の電子化を目的に、日経新聞が4大証券会社などと合弁で設立しました。そうした経緯から、日本の証券業界では今も弊社サービスを「必要不可欠なツール」として使い続けて頂いています。
現在は、金融に限らず、さまざまな分野で「データに基づく洞察」を提供する事業を展開しています。私どもは、データベースを作り、必要なデータをスカウト(探してくる)し、分析し、アウトプットする、という一連のプロセスのノウハウを持っています。その強みを生かし、企業経営や自治体の運営に有益な情報を提供しています。
例を挙げると、今日では、観光に関するデータ分析で、特定の県にどの国からどれくらいの数の人々が特定の県を訪れているか把握することができますが、そこにさまざまなデータを組み合わせることで、効果的な情報発信やオーバーツーリズム解消などに役立てることができます。
原点である金融関連情報でも、AIの普及や海外からの日本市場への注目の高まりなどの業界の変化に応じて常に事業を強化しています。上場企業の環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する90項目以上の定量・定性情報を収録した「ESGデータ」や、オルタナティブに関するデータ、統合報告書などに記載された文章情報のデータ化など、広く公開されている「株価と財務データ」だけではないプラスアルファの情報が私どもの強みです。
日経グループの一員であることも強みですか。
「日経」の名は、国内はもとより日経平均株価指数によって、世界でもその名が広く浸透しています。その知名度と、QUICKが50年以上にわたりお客様に正確なデータをご提供してきた実績への評価が重なり、信頼に繋がっていると感じます。2015年に英Financial Times(FT)が加わった日経グループは、欧米メディアに比べても引けを取らない強力な海外拠点ネットワークを持っています。英字メディアNikkei Asiaの成長もあり、特にシンガポールをはじめとしたアジアにおけるネットワークを拡充・強化しています。
日本のマーケットをどうご覧になりますか。
私は2022年から今春まで、日経アメリカ社の社長としてニューヨークに駐在しました。コロナ禍が収束するあたりの時期から、日本企業や日本のマーケットに対する急速な関心の高まりを肌で実感しました。実際、日経アメリカ社でも新聞の法人販売や広告の収益を、日本マーケットなどに関するデータ販売部門の収益が上回るようになりました。世界各国で、政治的にも経済的にも「動きの振れ幅」が大きくなっている今日、日本の持つ安定性は、投資先の選択肢として大きな魅力となっています。一方で「失われた30年」の間に日本のマーケット、特に個別の企業の動きに精通した世界の金融関係者は大きく減りました。まだ必要な情報が十分に世界に届いていないと感じます。
日本の企業は中・小規模の企業が多いのが特徴です。世界のアナリストがモニタリングしておらず、投資家の目に付きにくい企業が多くあります。逆に言えば、適切な情報がグローバルに共有されれば、日本の市場や企業はまだまだ成長する余地があるということだと思います。
金融都市としての東京をどう評価されますか。
東京は金融の街としての存在感がありますが、「それだけでない」ことが大きな特徴だと思います。多くの大企業が本社を置き、霞が関があり、永田町がある。政官財の意思決定者がそろっている街です。これだけコンパクトなエリアで全てが効率的に完結する都市は、世界的にもユニークで、生活インフラの質や治安の良さなどと合わせて、東京の強みだと感じます。
FinCity.Tokyoの新理事に就任されました。
国内企業の英語IR活動の強化や、ESGスコアの発信などの活動は、優良な日本の企業にグローバル投資家の目を向けさせる、意義ある取組みです。海外で“Tokyo”の存在感が高まることは、私どもの事業の後押しにもなります。日経グループのアジアや欧米の拠点、FTの資産を活かして、FinCity Tokyoの発信をお手伝いするなど、活動に貢献したいと考えています。